Blog

五月祭で講演

14 May 2023

東京大学の学園祭のひとつ、五月祭で一般向けの講演をしました。「10分で伝えます! 東大研究最前線」という企画で、卓越大学院のセミナーで研究発表した際に、聞いてくださっていた聴衆の学生さんに誘っていただいたものです。

私にとって一般向け、特に高校生や学部生が聞いてくれるような場所での発表というのには特別な意味合いがあります。 なぜなら、私自身が高校生のときにいまの研究室の先生(小松先生)の講演を聞いて、氷の研究を志したという経緯があるからです。この話については別のところに書いてあるので、ここでは詳細は省きますが、自分が研究する立場になった以上、一般の方々に「研究って面白い」と思っていただく機会を提供するのは、私の責務のようなものです。

アウトリーチ活動については、あまり効果がないという意見もあるでしょうし、進んでやりたくないという先生がいることも、研究者として理解できます。 だからこそ、 「アウトリーチ活動のきわめて直接的な成果物」である私は、研究者ではない皆さんと接する機会を大切にしたいという気持ちが強いのです。また、高校生・研究室に入る前の大学生との関わりも大切です。あまり機会は多くなく、かなわないこともありますが、学部の学生さんへの体験ゼミや学生実験のTAなど、できるだけ引き受けたいという気持ちがあります。

べつに、そういう活動を通じて未来の研究者を増やしたいという気持ちはそこまで強くありません。もちろん、私の話を聞いて研究者を志してくれる方がいたとしたらこの上なく嬉しいですが、そうでなくても、「大学における基礎研究のファンを増やす」ということには、十分意味があると思います。もっとも、私は学園祭委員時代に広報の仕事をしていたこともあり、自分のしていることを他の人に伝えるということが好きだというところに、結局は尽きると思います。ですから、その場を楽しんでくださる聴衆の方が一人でも多ければ良し、結果的に、それ以上の波及効果があれば、なお良しという考えです。

高校1年生の当時のことを思い出そうとしても、あまり多くのことは思い出せません。内容については、断片的な記憶があるのみです。それでも、大学の研究は面白そうだ、という感想や、新しい氷を見つけてみたいという好奇心は忘れられずに心に残っています。ですから、今回お話をいただいたときも、細かいことを理解してもらうというより、面白そうなことを楽しく研究していますということを伝えられるように、発表の構成を考えました。

20人〜30人くらい知り合いが来てくれたこともあり(みんなありがとう!)、会場だけで100人以上の聴衆が集まるセッションになりました。また、その後すれ違った知り合いが何人も「オンラインで聞いたよ」と言ってくれて、ありがたい限りです。出張中の指導教員もオンラインで聞いてくれたらしく(特にこの企画について伝えた記憶はないけど……)、「ナイストークでした」と感想をくれました。

それ以上に嬉しかったのは、たった10分の講演、何万という来場者のうちたった100人しか会場にいなかったはずなのに、その後Twitterで面白かったというメッセージやツイートをいくつかいただいたことです。ふつう、学会や研究会で発表しても、質疑応答の時間以外で反応をもらえることはあまりありません。しかし、12月にやった卓越大学院のセミナーや、今回の一般向けの講演では、何人もの聴衆の方々から個別に反響をいただきました。この経験は、「自分の分野の研究者以外の人に向けて、自分の研究を話す」ということの充実感を、確かに私に植え付けました。

また機会があれば、今回の企画をはじめ、自分の研究の広報活動をしていこうと思います。なにか、そういう場所があれば、ぜひご紹介いただければ嬉しいです。