Publication List

* indicates the corresponding author

2024

Co-authored research paper

Hydrogen bond symmetrisation in D2O ice observed by neutron diffraction

Nature Communications (2024)

Kazuki Komatsu*, Takanori Hattori, Stefan Klotz*, Shinichi Machida, Keishiro Yamashita, Hayate Ito, Hiroki Kobayashi, Tetsuo Irifune, Toru Shinmei, Asami Sano-Furukawa, and Hiroyuki Kagi.

小松さんが近年継続して取り組んでいる、ナノ多結晶ダイヤモンド(NPD)をアンビル材に使用したDACを用いた中性子回折の仕事で、達成すべきいくつかの目標のうち、大きな第一段階を総括するような論文です。今回、最高圧力106 GPaまでの粉末中性子回折をD2Oに対して行い、水素結合の対称化がどの圧力で生じているのかを議論しました。

100 GPaを超える圧力での中性子回折を報告したのは我々が最初ではありません(→Haberl et al., Sci. Rep. (2023))。Oak Ridgeグループの論文と今回の仕事が決定的に異なるのは、実際に詳細な結晶構造解析に成功し、ice VII (X)中の水素位置を精密化することができたという点です。この鍵になっているのは、NPDをアンビルに用いているという点で、我々の手法は根本的な手法面で他とは一線を画しています。NPDは、広く用いられている単結晶ダイヤモンドと比較して中性子の吸収補正(より正確には、入射中性子が試料に到達する前にアンビルによって吸収される効果の補正)がシンプルであり、回折強度の信頼性が高いです。ダイヤモンドが歪む影響、ダイヤモンド自身の回折ピークが氷のピークと重なる影響など、難しい部分はありましたが、最終的にはRietveld解析を行うことができました。

たくさんの共著の方々がいらっしゃいますが、NPDを提供してくださった愛媛大学グループ、世界最高の性能をもつラジアルコリメータの開発をはじめとしてビームライン整備に尽力くださった服部さんはじめPLANETチームの皆さん、高圧セル開発を長年支えてくださったStefan Klotz博士、どなたか一人が欠けては実現できなかった仕事だったと感じます。私が見届けたのはその最後の数年の部分だけですが、とても貴重な経験になりました。

私は実験と議論、論文執筆を手伝いました。特に106 GPaを出した朝のことは忘れません(疲れ切っておりましたのであまり明るい思い出ではありませんが笑)。NPDプロジェクトはまだ続くようですが、ひとまずはお疲れさまでした!

Co-authored research paper

High-pressure and high-temperature Raman spectroscopic study of zircon as a pressure scale in hydrothermal DACs

Journal of Raman Spectroscopy (2024)

Naoko Takahashi*, Hiroki Kobayashi, and Hiroyuki Kagi.

ポスドクの高橋さんとの共著論文が出ました。高橋さんが東大にいらして最初のプロジェクトです。 高温高圧実験において、ジルコンのラマンスペクトルを使って圧力を決定する手法を、従前より広い圧力範囲へ拡張しました。 私は主に放射光XRDの担当でした。

控えめには低圧領域の先行研究が良くできていたという話でもありますが、先行研究がややトリッキーな方法で圧力を計算していたのに対し、標準的な方法で圧力を決定し、圧力スケール間の整合性を担保しつつ調べ直したのは意味があったと思います。圧力スケールは利用されて初めて価値が生まれるので、今後は本研究の結果を利用した成果を期待します。特に、他グループの高橋さん以外の方にも使っていただければ、とても嬉しく思います。